旅ライド3 鳥取~倉吉 倉吉絣
実は私、なんとも不思議なご縁で・・・倉吉絣のことを知りました。
購入したアンティークの伊予の絵絣が届かないというネット詐欺にあったのです。
自転車と蝶の紋様の絵絣を見て運命を感じたのですが・・・怪しいと思いつつ簡単に決済できたため、うっかり騙されました。
しかしながらその商品?の説明で絣の研究をされていて織物教室で講師もされ、伝統工芸士でもある福井貞子先生の存在を知りました。
先生にその絵絣を見てもらったと書いてありました。
私は絣の古い反物をサイクルキャップに作って頂いてから、絣や木綿についてもっと知りたいと思い、先生の本を拝読しました。
先生はたくさん本を描かれていて、絣の美しさに惹かれどんどん調べていくと「1枚のぼろ布」にたどり着いたと書かれています。
先生の本にはその時代の人々の生き方も大変詳しく書かれており、綺麗な織物だというだけでなく、大変な苦労を乗り越えて、たましいのこもった布であるという事がわかりました。
鳥取から倉吉までの道のりは一番初めにチャレンジした400㎞ブルべの時も走りましたが、その時は真っ暗でした。明るいと海が見えてとても楽しい道です。
まずは伯耆しあわせの郷へ。ご紹介頂いた館長さんに挨拶をして、ご案内いただき、倉吉絣の教室を拝見しました。
たくさん織機がありますが、古いものもあり、蔵にあった寄付されたものもたくさんあるそうです。ちょうど反物を織る準備をされていました。
藍染や草木染の教室もあり、初めは小さなコースターから始まり、反物が織れるようになるには随分と修行と時間が必要だそうです。
お昼は食堂のお弁当を頂きました。年配の女性が元気に働いておられてとても美味しいお弁当でした。
そして先生のお宅に訪問させていただきました。
近くまで来ましたがお宅がわからず、近所の方にお聞きしたところ「まだ海外から帰ってないのではないの?」とびっくりされています。
教えて頂いてお宅に到着しました。先生はスペイン訪問から帰ったばかりだったそうです。
ですからお礼やご報告などでお忙しく、自転車の方でなければ会うのはお断りしていましたと。
そのことをお聞きしてびっくりしました。
お時間は1時間、写真はNGという事でしたので心のカメラに映してきました。
そしてさらにびっくり。初めてケンポナシを見ました。
崑崙(こんろん)山脈に自生し日本に伝わった梨の元だそうです。
木の枝に見えましたが先生に勧められて食べてみると濃い梨の味がします。甘くて美味しい。
このあたりの方はお菓子よりこちらの方が良いとよく食べられるそうです。薬効ありそうです。
先生のお宅と自転車は深い関わりがおありで、次男さんが自転車好きで東京までライドをしたことや自転車の会社にもお勤めだったことをお聞きしました。
その会社はうちの息子たちが子供の時からずっとお世話になっていた宮田サイクルでした。
そして先生の亡くなられたご長男がスペインのサラマンカ大学に留学されていたそうで、今回のスペイン訪問はご長男の思い出の場所でもありとても嬉しかったと仰られていました。
サラマンカ大学では「木綿と和紙で織った日本の伝統的絣展」で因州和紙を使った着物や綿と合わせて織った作品などを展示されたそうです。
一反の布を織るのに五万三千たたく。たたく音に心が入る。吉祥紋様には意味がある。
良い心、楽になる、神聖、いろんな事に強い、くよくよしない。
その言葉は織ることでたましいが強くなるイメージでした。
今と昔と女性の生き方が違ってきたが何が幸せと思われるかという質問をしましたら
先生は、ひとつの目標に向かって自分の生きたいように、ひたむきに一生懸命やっていると道がひらける。
あなたは自転車で今の様な事をされていったらいいのではないですかと言って頂きました。
たましいに喝が入りました。やりたいことをやる!このことが幸せに繋がります。
そして展示されている倉吉絣を見せて頂きました。遮光カーテンで覆われた部屋で管理されていますので、写真は撮れないのですよという事でした。
先生も91歳になられますが、電動アシストの自転車に時折乗っておられるそうです。
テキパキとした時間の使い方、おおらかで前向きな心の持ちよう、本当にお会いできたことは一生涯の思い出になり、大変良い勉強になりました。
そして先生のお着物が日本伝統工芸展に入選されたので、12月6日から25日まで、松江の島根県立美術館で展示されます。
本当に素晴らしいです!
最後に先生の息子さんが東京まで走った自転車の写真を、持参したカメラで撮らせていただきました。
最後は雨が来るから気を付けてと見送って頂き、濡れることなく宿に着きました。
自転車が繋いでくれたご縁に心から感謝でした。